病院から在宅へ移行する利用者が安心して療養生活を送るためには、退院前から病院と訪問看護ステーションが連携することが重要です。
その連携を評価する加算として設けられているのが「退院時共同指導加算」です。
しかし、
- どのような場合に算定できるの?
- オンライン参加でも大丈夫?
- 初回加算との関係は?
- 老健や介護医療院からの退所でも算定できる?
など、実務上の疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、退院時共同指導加算は「退院前に病院等と共同指導を行い、退院後初回の訪問看護を実施した場合」に算定できます。
ただし対象施設や算定回数など注意点もあるため、本記事で詳しく解説します。
本記事では、訪問看護の退院時共同指導加算について、算定要件やQ&Aを交えながらわかりやすく解説します。
因みに訪問リハビリの退院時共同指導加算については、以下の記事に詳しく書いてあります。
目次
1.退院時共同指導加算とは?
退院時共同指導加算とは、病院や介護保険施設等から退院・退所する利用者に対して、入院(入所)中に病院等の職員と共同で療養上の指導を行った場合に算定できる加算です。
退院後の生活を見据え、
- 医療処置
- 服薬管理
- 家族指導
- 在宅環境の確認
- 緊急時対応
などを事前に共有し、円滑な在宅移行を支援することを目的としています。
2.算定できる対象施設
訪問看護の退院時共同指導加算の対象となる施設は以下のとおりです。
- 病院
- 診療所
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
訪問リハビリの退院時共同指導加算とは異なり、老健や介護医療院からの退所も対象となります。
3.算定要件
退院時共同指導加算を算定するためには、次の要件を満たす必要があります。
① 退院・退所前に共同指導を実施する
利用者が退院・退所する前に、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)が
- 医師
- 看護師
- リハビリ職
- 相談員
などと共同して指導を行います。
② 利用者または家族へ指導する
職員同士の情報共有だけでは算定できません。
利用者本人または家族に対して、
- 病状
- 医療処置
- 療養上の注意点
などを説明する必要があります。
③ 指導内容を記録する
共同指導を行った日時や内容を診療録・訪問看護記録書等へ記載します。
④ 退院後に訪問看護を実施する
共同指導だけでは算定できません。
退院後に実際の訪問看護を提供する必要があります。
その際の初回訪問実施日に算定可能です。
また退院時共同指導加算を算定する前月に、退院時共同指導を行っても算定可能です。
4.単位数
| 単位数 | |
| 退院時共同指導加算 | 600単位/回 |
退院または退所につき1回算定できます。
ただし、特定の利用者については複数回算定できる場合があります。
5.特別管理加算対象者は2回算定できる?
、『厚生労働大臣が定める状態(利用者等告示第6号)』に該当する利用者については、1回の入院・入所につき2回まで算定が認められています。
厚生労働大臣が定める状態(利用者等告示第6号)は以下のようになっています。
| 区分 | 対象となる状態 | 具体例 |
|---|---|---|
| イ | 在宅で医療管理を受けている状態、または気管カニューレ・留置カテーテルを使用している状態 | 在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法、在宅強心剤持続投与、在宅気管切開患者指導管理、気管カニューレ、留置カテーテル |
| ロ | 在宅療養に必要な医療機器・医療管理を受けている状態 | 在宅自己腹膜灌流、在宅血液透析、在宅酸素療法(HOT)、在宅中心静脈栄養(IVH)、在宅成分栄養経管栄養、在宅自己導尿、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)、在宅自己疼痛管理、在宅肺高血圧症患者指導管理 |
| ハ | 人工肛門または人工膀胱を設置している状態 | ストーマ(人工肛門・人工膀胱) |
| ニ | 真皮を越える褥瘡がある状態 | ステージⅢ・Ⅳ相当の褥瘡など |
| ホ | 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態 | 医師の指示により週3日以上の点滴を実施する利用者 |
など、特別管理加算の対象となる利用者です。
医療依存度が高く、退院支援の必要性が高いことが理由です。
またこのように2回算定可能な方に対しては、
複数の
- 訪問看護ステーション
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所
- 看護小規模多機能型事業所
が同日に退院時共同指導を行う場合にあっては、別日に1回ずつの算定も可能です。
また、利用者さんに複数の訪問看護ステーションが入るケースでは、「うちは実施したけど、他の事業所も実施していた」ということがないように注意しましょう。
病院(または介護老人保健施設)に、他事業所の退院時共同指導の有無を確認しておくことが大切です。
確認を怠ると、算定上のトラブルにつながります。
6.上記以外の退院時共同指導加算は重複算定できません
介護保険の訪問看護で退院時共同指導加算を算定した場合、同じ月に以下のサービスで退院時共同指導加算を重ねて算定することはできません。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
- 医療保険の訪問看護
※ただし、上記の『5.特別管理加算対象者は2回算定できる?』の場合は除きます。
7.オンライン参加は可能?
ICTを活用した共同指導も認められています。
ただし、
- 利用者の同意
- 個人情報保護
- 通信環境の確保
が必要です。
単なる電話ではなく、映像を活用した双方向のやり取りが望ましいとされています。
8.【Q&A】訪問看護の退院時共同指導加算でよくある質問
退院時共同指導加算は、算定時期や算定回数などで迷いやすい加算です。ここでは、実務でよくある質問をQ&A形式で解説します。
Q1. 退院時共同指導を実施した2か月後に退院後初回の訪問看護を行った場合、退院時共同指導加算は算定できますか?
A. 算定できません。
退院時共同指導加算は、退院後初回の訪問看護を行った月と同じ月、またはその前月に退院時共同指導を実施していることが算定要件です。
例えば、
- 4月:退院時共同指導を実施
- 6月:退院後初回の訪問看護を実施
この場合は、退院時共同指導加算は算定できません。
ポイント
- 〇 同月に初回訪問
- 〇 翌月に初回訪問
- × 2か月以上空いて初回訪問
Q2. 2か所の訪問看護ステーションで退院時共同指導加算を算定できますか?
A. 原則として算定できません。
退院時共同指導加算は、1回の入院につき1回のみ算定できます。
そのため、通常は1か所の訪問看護ステーションのみが算定可能です。
例外
利用者が特別管理加算の対象であり、1回の入院につき2回まで退院時共同指導加算を算定できる場合は、
- A訪問看護ステーションが別日に退院時共同指導を実施
- B訪問看護ステーションも別日に退院時共同指導を実施
というケースでは、それぞれ1回ずつ算定できます。
ポイント
- 原則:1回の入院につき1回
- 特別管理加算対象者:条件を満たせば2回まで算定可能
Q3. 利用者が1か月の間に入退院を繰り返した場合、退院時共同指導加算は複数回算定できますか?
A. 条件を満たせば算定できます。
退院・再入院を繰り返した場合でも、それぞれの退院後に訪問看護を提供していれば、退院時共同指導加算を複数回算定できます。
算定できる例
- 入院
- 退院時共同指導
- 退院
- 訪問看護を実施
- 再入院
- 退院時共同指導
- 退院
- 訪問看護を実施
➡ 退院時共同指導加算は2回算定可能
算定できない例
- 入院
- 退院時共同指導
- 退院
- 訪問看護を実施しないまま再入院
- 退院時共同指導
- 退院
- 初回の訪問看護を実施
➡ 退院時共同指導加算は1回のみ算定可能
ポイント
退院時共同指導だけを複数回実施しても、退院後の訪問看護が提供されていなければ、その分の加算は算定できません。
Q4. カンファレンスだけ参加した場合は算定できる?
できません。
利用者または家族への共同指導が必要です。
Q5. 家族のみ参加でも算定できる?
利用者本人の参加が難しい場合は、家族への指導でも算定可能です。
Q6. 老健から退所する場合も算定できる?
算定できます。
訪問看護では老健や介護医療院も対象施設に含まれます。
Q7. 初回加算と併算定できる?
要件を満たしていれば併算定可能です。
退院時共同指導加算と初回加算は目的が異なるため、それぞれの算定要件を満たしていれば算定できます。
初回加算の算定要件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
Q8. オンラインで実施した場合も算定できる?
ICT活用の要件を満たしていれば可能です。
9.実地指導で確認されやすいポイント
実地指導では次の内容が確認されることがあります。
共同指導記録
- 実施日時
- 参加者
- 指導内容
利用者・家族への説明内容
具体的にどのような説明を行ったのかが重要です。
訪問看護との関連性
退院後に訪問看護が実施されているか確認される場合があります。
10.記録例
【退院時共同指導記録】
実施日:令和〇年〇月〇日
参加者:
病院主治医、病棟看護師、医療ソーシャルワーカー、訪問看護師、利用者、家族
内容:
・退院後の服薬管理方法を説明
・インスリン自己注射の手順を確認
・緊急時連絡先を共有
・訪問看護開始日を確認
・家族へ観察ポイントを説明
11.まとめ
退院時共同指導加算は、病院と在宅をつなぐ重要な加算です。
算定のポイントは、
- 退院前に共同指導を行う
- 利用者または家族へ説明する
- 記録を残す
- 退院後に訪問看護を提供する
の4点です。
また、特別管理加算対象者では2回算定できる場合もあるため、対象利用者を把握しておくことが大切です。
適切な退院支援を行い、利用者が安心して在宅療養へ移行できるよう支援していきましょう。
12.参考資料
・厚生労働省「訪問看護に関する各種通知」
・厚生労働省「介護報酬改定Q&A」
・厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
※本記事は制度の概要を解説したものであり、算定を保証するものではありません。実際の請求にあたっては最新の通知・Q&Aをご確認ください。
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