【令和3年度】投薬数の減少を評価!かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定要件とQ&A

かかりつけ医連携薬剤調整加算 算定要件 Q&A

いつもお世話になっています!Pスケ(@kaigonarehabilid)です。

平成30年度の介護報酬改定では様々な新規加算の創設、既存の加算の算定要件変更などがありました。

その中の1つに『かかりつけ医連携薬剤調整加算』というものがあります。

また令和3年度の介護報酬改定ではこのかかりつけ医連携薬剤調整加算が細分化され、3つの分類に分けられることとなりました。

ってことで、今回は『【令和3年度】投薬数の減少を評価!かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定要件とQ&A』について話したいと思います。

▼目次▼

第152回社会保障審議会介護給付費分科会で議論された内容に、入所時の『介護老人保健施設の医師』と『在宅のかかりつけ医』の連携の部分が取り上げられています。

『介護老人保健施設の医師』と『在宅のかかりつけ医』の連携について、入退所時に特に連携してない施設は約25%前後とのこと。

かかりつけ医連携薬剤調整加算 連携引用:資料2 介護老人保健施設の報酬・基準について(第152回社会保障審議会介護給付費分科会)

また多剤投薬も問題になっており、下図のように介護老人保健施設入所者の服薬数は平均5.9種類となっています。

投薬の6種類以上は特に薬物有害事象の発生増加が高いとされていますが、平均5.9種類はそのリスクは高い状況です。

かかりつけ医連携薬剤調整加算 多剤投薬引用:資料2 介護老人保健施設の報酬・基準について(第152回社会保障審議会介護給付費分科会)

これらのことから、医薬品の適正使用の推進入所者に対する多剤投薬を見直す取り組みを評価する為、今回の『かかりつけ医連携薬剤調整加算』の創設となりました。

2.かかりつけ医連携薬剤調整加算とは?

かかりつけ医連携薬剤調整加算とはどのようなのを指すのでしょうか?

かかりつけ医連携薬剤調整加算について以下のようになっています。

当該入所者に処方する内服薬の減少について、退所時又は退所後1月以内に当該入所者の主治の医師に報告し、その内容を診療録に記載した場合

一部引用:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示

また入所者1人につき1回を限度に退所時に算定可能となっています。

3.対象施設

かかりつけ医連携薬剤調整加算 対象施設
今回の『かかりつけ医連携薬剤調整加算』の対象施設は以下の施設です。

  • 介護老人保健施設

4.単位数

令和3年度の介護報酬改定により、かかりつけ医連携薬剤調整加算の単位数は以下のようになってます。

単位数
かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)100単位/日(新設)
かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)240単位/日(新設)
かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅲ)100単位/日(新設)

5.算定要件&留意事項

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定要件は以下の内容を守れば大丈夫です。

5.1.かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)

かかりつけ医連携薬剤調整加算 共同

5.1.1.入所者の薬物の総合的な評価と主治医との連携

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)は入所者の薬物療法について、

入所中に薬物療法の総合的な評価

入退所時に主治医との連携

を評価する加算です。

5.1.2.主治医への説明と合意

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)では、入所後1月以内処方内容の変更の可能性があることを主治医へ説明・合意をしなければなりません。

その際に薬剤調整報告書(別紙様式8)を参考にして行っていきます。

また処方経緯などの情報収集も一緒に行っていくことが望ましいとされています。

5.1.3.総合的な評価

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)では、入所中に複数の薬剤投与によって

  • 期待される効果
  • 副作用の可能性等

を入所者の病状生活状況等に伴う服薬アドヒアランスの変動等に十分考慮し、総合的に評価を行っていきます。

5.1.4.ガイドライン等を参考に

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)での総合的な評価、変更に当たり以下のガイドライン・指針を参考にしていきます。

5.1.5.薬剤変更等に係る情報提供

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)では、退所時または退所後1月以内に以下の内容を主治医に情報提供を行います。

  • 評価内容
  • 処方内容の変更理由・経緯
  • 変更後の状態等

上記の内容を診療録に記載している場合に入所者一人につき1回を限度として退所時に加算が取得できます。

この主治医との連携は薬剤変更等に係る情報提供書(別紙様式9)を参考に行っていきます。

5.1.6.研修の受講

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)を算定するにあたり、

介護老人保健施設の医師

または

常勤の薬剤師

高齢者の薬物療法に関する内容を含む研修を受講しなければなりません。

ただし、以下の者は高齢者の薬物療法に関する研修を受講したとみなされます。

高齢者の薬物療法に関する十分な経験を有する医師

または

薬剤師

ちなみに令和3年10月31日までに研修受講予定(令和3年4月以降、受講申込書などを持っている場合)でなければ

4月~10月までにかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)を算定していた場合は、返還しなければなりません。

5.1.7.令和3年3月31日までの入所者について

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)で、令和3年3月31日までに入所していた利用者について、処方内容の変更について主治医と合意し、以下の内容を満たした場合は算定できます。

5.1.3.総合的な評価
5.1.5.薬剤変更等に係る情報提供
5.1.6.研修の受講

5.2.かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)

かかりつけ医連携薬剤調整加算 主治医 報告

5.2.1.かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)の要件を満たす

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)では、まずかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)の算定要件を満たしている必要があります。

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)の算定要件は上記に記載されていますので、ご覧ください。

5.2.2.入所期間が3月以上見込まれる入所者

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)では入所者の入所期間が決められています。

それは、入所期間が3月以上であると見込まれる入所者であることです。

この要件を満たす必要があります。

5.2.3.LIFE(科学的介護情報システム)の活用

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)ではLIFE(科学的介護情報システム)を用いて厚生労働省へ情報の提出を行います。

サービスの質の向上を図るためにLIFEへの提出情報フィードバック情報を活用していきます。

(1)LIFEへの情報提出頻度として

入所者ごとに以下の内容を翌月の10日までに提出する必要があります。

  1. 施設に入所した日の属する月
  2.  処方内容に変更が生じた日の属する月
  3.  ①または②の月のほか、少なくとも3月に1回
  4.  施設を退所する日の属する月

(2)LIFEへの提出情報について

上記の『(1)LIFEへの情報提出頻度として』の期間は「傷病名」及び「処方薬剤名」の情報を入力していきます。

更に『(1)LIFEへの情報提出頻度として』の『②処方内容に変更が生じた日の属する月』薬剤変更等に係る情報提供書(別紙様式9)

変更・減薬・減量の別」「変更・減薬・減量理由」の各項目に係る情報をすべて提出します。

ちなみにLIFEへの提出情報は、以下の時点における情報とします。

  • 『①.施設に入所した日の属する月』の提出情報は、当該算定を開始しようとする月時点における情報及び当該者の施設入所時における情報
  • 『②.処方内容に変更が生じた日の属する月』の提出情報は、当該入所時における情報
    『③.①または②の月のほか、少なくとも3月に1回』の提出情報は、当該変更時における情報
  • 『④.施設を退所する日の属する月』の提出情報は、前回提出時以降における情報

 

詳細は『科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について』に記載されていますのでご覧ください。

サービスの質の管理を行う一連のサイクル(PDCAサイクル)として

(Plan):入所者の病状、服薬アドヒアランス等に応じた処方の検討

(Do):当該検討に基づく処方

(Check):処方後の状態等を踏まえた総合的な評価

(Action):評価結果を踏まえた処方継続又は処方変更

LIFEへ提出された情報は、国民の健康の保持増進及びその有する能力の維持向上に適宜活用されるようです。

5.3.かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅲ)

5.3.1.かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)の要件を満たす

介護保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅲ)では、まずかかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)の算定要件を満たしている必要があります。

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)の算定要件は上記に記載されていますので、ご覧ください。

5.3.2.6種類から1種類以上減薬

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅲ)の対象者は内服を開始してから4週間以上経過しており、6種類以上服薬している入所者が対象です。

4週間以内に内服開始した薬剤に関しては調整前の内服薬に含みません。

内服薬の種類数の計算方法として、以下の物を1銘柄1種類として計算していきます。

  • 錠剤
  • カプセル剤
  • 散剤
  • 顆粒剤
  • 液剤

また鎮痛剤などの頓服薬は内服薬からは除外します。

この入所時の6種類以上の内服薬から、介護老人保健施設を退所までに1種類以上内服薬を減少出来れば算定可能となります。

5.3.3.介護老人保健施設の医師と主治の医師の共同

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅲ)を取得するには『介護老人保健施設の医師(以下、老健の医師)』と『主治の医師(以下、主治医)が内服薬の処方内容を共同して減薬の検討をしなければなりません。

5.3.4.診療録に記載

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅲ)では以下の内容を診療録に記載する必要があります。

  • 合意した内容
  • 調整の要点

6.Q&A

問 105.かかりつけ医連携薬剤調整加算については、介護老人保健施設の医師又は常勤の薬剤師が、高齢者の薬物療法に関する内容を含む研修を受講していることとされているが、公益社団法人全国老人保健施設協会、一般社団法人日本病院薬剤師会などの団体が開催する研修において、高齢者の薬物療法に関する内容として、加齢に伴う身体機能・薬物動態の変化、慎重な投与を要する医薬品等の内容を含む場合は、加算の算定要件に適合すると考えて差し支えないか。

(答)
・ 差し支えない。
・ なお、研修を受けた常勤の薬剤師は、入所者やその家族、他職種等から薬剤やその影響等の情報収集を行い、必要な情報を医師に報告するとともに、処方変更の具体的な提案や副作用の発現モニタリング、処方変更後の経過確認、退所に向けた用法整理等の提案等を行うこと。

問4.LIFEに提出すべき情報は「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和3年3月 16 日老老発 0316 第4号)の各加算の様式例において示されているが、利用者又は入所者の評価等に当たっては、当該様式例を必ず用いる必要があるのか。

(答)
・ 「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和3年3月 16 日老老発 0316 第4号)においてお示しをしているとおり、評価等が算定要件において求められるものについては、それぞれの加算で求められる項目(様式で定められた項目)についての評価等が必要である。
・ ただし、同通知はあくまでもLIFEへの提出項目をお示ししたものであり、利用者又は入所者の評価等において各加算における様式と同一のものを用いることを求めるものではない。

7.詳細

詳細は厚労省の以下のサイトに記載されています。

8.最後に

内服薬の多剤投与は以前から問題になっており、副作用や医療費の増大などあまり良いメリットはありません。

介護老人保健施設に入所中、適切な投薬管理・調整を行う必要があります。

適切な投薬管理・調整を行うことで、在宅での生活が少しでも長く続けられるようなアプローチを行うことが今後の介護老人保健施設には求められています。

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