訪問介護費とは?
高齢化が進む中、自宅で生活を続けながら介護サービスを利用する方が増えています。
その中でも、多くの利用者に利用されているサービスが**訪問介護(ホームヘルプサービス)**です。
しかし、
- 訪問介護費とは何?
- 基本報酬はどのような場合に算定できるの?
- 身体介護と生活援助の違いは?
- 算定できないケースはあるの?
など、制度が複雑で分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、訪問介護費の基本報酬について、算定要件やサービス内容、実務上の注意点を交えながら分かりやすく解説します。
目次
1. 訪問介護費とは?
訪問介護費とは、介護保険制度において、訪問介護事業所の介護福祉士やホームヘルパーなどが利用者の自宅を訪問し、必要な介護や日常生活上の支援を行った場合に算定できる基本報酬です。
訪問介護は、利用者が住み慣れた自宅で安心して生活を続けられるよう支援することを目的としています。
提供されるサービスは大きく3つに分類されます。
- 身体介護
- 生活援助
- 通院等乗降介助
それぞれ算定方法や要件が異なるため、内容を正しく理解しておくことが重要です。
2. 訪問介護の対象者
訪問介護を利用できるのは、原則として介護保険で要介護1~5の認定を受けた方です。
一方、要支援1・2の方は、地域の実情に応じて実施される介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービスの対象となる場合があります。
サービスを利用するためには、居宅サービス計画(ケアプラン)に訪問介護が位置付けられていることが必要です。
3. 訪問介護で提供できるサービス
訪問介護では、利用者の日常生活を支えるために、次のようなサービスを提供します。
身体介護
利用者の身体に直接触れて行う介助です。
例えば、
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 更衣介助
- 体位変換
- 移乗・移動介助
- 清拭
などが該当します。
生活援助
利用者本人が日常生活を送るために必要な家事を支援します。
例えば、
- 調理
- 掃除
- 洗濯
- 買い物
- 薬の受け取り
などが該当します。
ただし、家族のための家事や、日常生活に直接必要のない支援は訪問介護費の対象外となります。
通院等乗降介助
利用者が病院などへ通院する際に、自動車への乗降や乗降前後の介助を行うサービスです。
利用できる条件や算定方法は、身体介護や生活援助とは異なります。
4. 訪問介護費の基本報酬(時間区分と算定方法)
訪問介護費の基本報酬は、サービスの内容だけでなく、実際に提供したサービス時間によって算定区分が決められています。
身体介護・生活援助・通院等乗降介助では、それぞれ時間区分や算定方法が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。
身体介護の時間区分
身体介護は、利用者の身体に直接接触して行う介助を対象とし、提供時間に応じて次のように算定されます。
| 所要時間 | 基本報酬(令和6年度) |
|---|---|
| 20分未満 | 163単位 |
| 20分以上30分未満 | 244単位 |
| 30分以上1時間未満 | 387単位 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 567単位 |
| 以後30分を増すごと | 82単位を加算 |
※身体介護は、入浴介助・排泄介助・食事介助・更衣介助・移乗介助などが代表例です。
令和6年度介護報酬改定で単位数が見直されています。
生活援助の時間区分
生活援助は、利用者本人の日常生活を支援する家事援助を対象としています。
| 所要時間 | 基本報酬(令和6年度) |
|---|---|
| 20分以上45分未満 | 179単位 |
| 45分以上 | 220単位 |
生活援助には、調理・洗濯・掃除・買い物などが含まれます。
一方で、
- 家族のための食事づくり
- 来客への対応
- 大掃除
- 庭の手入れ
など、利用者本人の日常生活に直接必要とはいえない支援は、介護保険の対象外です。
通院等乗降介助
通院等乗降介助は、利用者が病院などへ通院する際に、自動車への乗降や乗降前後の介助を行うサービスです。
基本報酬は1回につき97単位です。
身体介護に引き続き生活援助を行った場合
訪問介護では、身体介護のあとに生活援助を続けて提供することがあります。
例えば、
- 排泄介助のあとに居室の掃除を行う
- 更衣介助のあとに食事の準備を行う
といったケースです。
この場合は、身体介護と生活援助を単純に別々に算定するのではなく、身体介護を基礎として、生活援助の時間に応じた加算を行うという算定方法になります。
令和6年度では、以下の様になっています。
| 身体介護(20分以上実施後) | 生活援助の所要時間 | 加算単位数 |
|---|---|---|
| 身体介護 + 生活援助 | 20分以上45分未満 | 65単位 |
| 身体介護 + 生活援助 | 45分以上70分未満 | 130単位 |
| 身体介護 + 生活援助 | 70分以上 | 195単位(上限) |
時間だけで算定区分を決めてはいけない
訪問介護費は、「30分実施したから30分以上1時間未満」と機械的に判断するものではありません。
実際には、
- ケアプランに位置付けられたサービス内容
- 訪問介護計画書
- 実際に提供したサービス
- サービス提供記録
が一致していることが重要です。
実地指導では、**時間だけでなく「どのような介護を提供したのか」**まで確認されることがあります。
そのため、サービス内容を具体的に記録しておくことが適正な算定につながります。
「身体介護の後」でなくても算定できます
「身体介護に引き続き生活援助を行った場合」と聞くと、身体介護を先に実施しなければ算定できないと思われがちです。
しかし、厚生労働省の留意事項通知では、実際のサービス提供は生活援助の後に身体介護を行う場合でも差し支えないとされています。
そのため、重要なのはサービスの実施順序ではなく、ケアプランや訪問介護計画書に基づき、身体介護と生活援助が一連のサービスとして適切に提供されていることです。
算定できないサービス
訪問介護では、利用者本人の日常生活に直接必要とは認められない支援は、介護保険の対象外です。
- 家族の食事づくり
- 家族の洗濯
- 来客への対応
- ペットの世話
- 庭木の剪定
- 草むしり
- 窓ガラスの大掃除
- 年末の大掃除
- 自家用車の洗車
- 利用者本人以外の部屋の掃除
これらは生活援助に該当せず、介護保険では算定できません。
判断に迷う場合
訪問介護で実際に、「これは算定できるのだろうか?」と判断に迷うケースも少なくありません。
その場合は、
- 利用者本人の日常生活に必要な支援か
- ケアプランに位置付けられているか
- 保険者の解釈に沿っているか
を確認することが大切です。
また、介護保険の対象となるか判断に迷う場合は、ケアマネジャーや保険者へ確認することが望ましいでしょう。
5. 訪問介護費の算定要件
訪問介護費は、訪問介護サービスを提供しただけで算定できるものではありません。
介護保険制度で定められた要件を満たしたうえで、適切なサービスを提供し、その内容を記録する必要があります。
主な算定要件は次のとおりです。
① 要介護認定を受けていること
訪問介護費は、原則として要介護1~5の認定を受けた利用者が対象です。
なお、要支援1・2の利用者は、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービスの対象となる場合があります。
② ケアプランに位置付けられていること
訪問介護は、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成した居宅サービス計画(ケアプラン)に位置付けられている必要があります。
また、訪問介護事業所では、ケアプランに基づき訪問介護計画書を作成し、その内容に沿ってサービスを提供しなければなりません。
③ 訪問介護員等がサービスを提供すること
訪問介護費は、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者など、資格要件を満たした以下の訪問介護員等がサービスを提供した場合に算定できます。
- 介護福祉士
- 介護職員初任者研修修了者
- 実務者研修修了者
- 旧ホームヘルパー養成研修課程修了者など、経過措置の対象となる者
サービスは利用者の居宅で提供することが原則です。
④ 訪問介護計画書を作成すること
訪問介護費を算定するためには、居宅サービス計画(ケアプラン)に基づき、訪問介護計画書を作成する必要があります。
訪問介護計画書は、サービス提供責任者が作成し、利用者や家族へ内容を説明して同意を得たうえで交付します。
計画書には、次のような内容を記載します。
- 援助の目標
- 提供するサービス内容
- サービスの実施方法
- 訪問頻度・時間
- 留意事項
また、利用者の状態変化やケアプランの変更があった場合には、訪問介護計画書の内容を見直し、必要に応じて変更することが求められます。
実地指導では、ケアプランと訪問介護計画書、サービス提供記録の内容に整合性があるかが確認されることがあります。
⑤ 利用者の日常生活上必要な支援であること
訪問介護で提供できるのは、利用者の日常生活を営むうえで必要と認められる支援です。
例えば、
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 掃除
- 洗濯
- 調理
などが該当します。
一方で、家族のための家事や利用者本人の日常生活に直接必要のない支援は、介護保険の対象外となります。
⑥ サービス提供記録を作成すること
訪問介護費を算定するためには、サービス提供後にサービス提供記録を作成し、保存する必要があります。
記録には、少なくとも次の内容を記載します。
- サービス提供日
- 提供開始・終了時刻
- 提供したサービス内容
- 利用者の状態
- 特記事項
サービス提供記録は、訪問介護計画書に沿ってサービスが提供されたことを証明する重要な書類です。
実地指導では、訪問介護計画書との整合性や、記録内容の具体性について確認されることがあります。
6. 訪問介護の「2時間ルール」とは?
訪問介護には、いわゆる**「2時間ルール」**というものがあります。
これは同じ利用者に対して、前回のサービス終了時刻からおおむね2時間未満で次のサービスを提供した場合は、原則として1回の連続したサービスとして取り扱われます。
具体例
算定できない例
- 9:00~9:30 身体介護
- 10:30~11:00 生活援助
前回終了から1時間しか経過していないため、原則として1回のサービスとして算定します。
別々に算定できる例
- 9:00~9:30 身体介護
- 12:00~12:30 生活援助
終了から2時間以上経過しているため、原則として別々に算定できます。
例外もある
利用者の心身の状況や医師の指示などにより、短時間の間隔で訪問する必要性が認められる場合は、2時間未満であっても別々に算定できることがあります。
その場合は、短時間で再訪問する必要性をサービス提供記録に具体的に記載しておくことが重要です。
痰が多く定期的な吸引が必要であり、利用者の状態から2時間以内の再訪問による吸引介助が必要であった。
7.【Q&A】訪問介護費でよくある質問
訪問介護費は、サービス内容や提供時間、利用者の状況によって算定方法が異なるため、現場では判断に迷う場面も少なくありません。
ここでは、実務でよくある質問をQ&A形式で解説します。
Q. サービスが予定より早く終わった場合でも、予定時間で算定できますか?
A. 原則としてできません。
訪問介護費は、実際に提供したサービス内容と所要時間に基づいて算定します。
そのため、予定では30分だったとしても、実際のサービス提供時間が20分程度であれば、その時間区分に応じて算定する必要があります。
ただし、利用者の心身の状況などにより、予定どおりのサービス提供ができなかった場合は、その理由をサービス提供記録に具体的に記載しておきましょう。
Q. 利用者の希望だけで生活援助を追加しても算定できますか?
A. 算定できません。
生活援助は、ケアプランや訪問介護計画書に位置付けられたサービスであることが必要です。
利用者や家族からの希望だけでサービス内容を変更した場合は、介護報酬の算定対象とならない可能性があります。
Q. サービス提供中に利用者の状態が変化した場合はどうすればよいですか?
A. 必要な介護を優先するとともに、状態変化を記録し、サービス提供責任者や介護支援専門員へ報告しましょう。
状態変化に応じてケアプランや訪問介護計画書の見直しが必要となる場合もあります。
Q. 身体介護の前に生活援助を行った場合でも算定できますか?
A. 算定できます。
厚生労働省の留意事項通知では、実際のサービス提供順序は問いません。
重要なのは、一連のサービスとして適切に提供されていることです。
Q. 同じ日に2回訪問した場合は、それぞれ算定できますか?
A. おおむね2時間以上の間隔がある場合は、それぞれ算定できます。
2時間未満の場合は、原則として1回のサービスとして取り扱われます。
Q. 家族がいる場合でも生活援助は算定できますか?
A. 必ずしも算定できないわけではありません。
家族が疾病や障害、就労などの理由で援助できない場合には、生活援助が必要と認められることがあります。
Q. ゴミ出しは生活援助に含まれますか?
A. 利用者本人の日常生活上必要な支援として一連の家事援助に含まれる場合は算定できます。
ただし、ゴミ出しだけを目的とした訪問は、介護保険の趣旨に照らして適切かどうかを個別に判断する必要があります。
Q. 電球交換は訪問介護で行えますか?
A. 利用者本人の日常生活上必要で、安全に実施できる範囲であれば認められる場合があります。
一方、高所作業や専門業者による対応が必要な作業は、訪問介護の対象外です。
8. 実地指導で確認されやすいポイント
訪問介護費は、サービスを提供しただけでは算定できません。
実地指導では、サービス内容が適切に提供されているかだけでなく、算定要件を満たしていることを証明できる記録が残されているかも確認されます。
特に、次の項目は確認されることが多いため、日頃から適切に管理しておくことが大切です。
① ケアプランと訪問介護計画書の整合性
訪問介護は、居宅サービス計画(ケアプラン)に基づいて提供されるサービスです。
実地指導では、
- ケアプラン
- 訪問介護計画書
- サービス提供記録
の内容に矛盾がないか確認されます。
例えば、ケアプランに位置付けられていないサービスを提供していた場合は、介護報酬の返還対象となる可能性があります。
② サービス提供記録
サービス提供記録には、単に「掃除」「食事介助」と記載するだけでは不十分です。
例えば、
記載例
- 排泄介助を実施し、立位保持は一部介助で対応した。
- 居室およびトイレの清掃を実施した。
- 食欲低下がみられたため、サービス提供責任者へ報告した。
など、具体的なサービス内容や利用者の状態変化が分かるように記録しましょう。
③ サービス提供時間
訪問介護費は、提供時間によって算定区分が異なります。
そのため、
- サービス開始時刻
- サービス終了時刻
を正確に記録しておくことが重要です。
特に、身体介護と生活援助を組み合わせて提供した場合は、それぞれのサービス内容と所要時間が分かるように記録すると、実地指導でも説明しやすくなります。
④ 2時間ルールの記録
前回のサービス終了からおおむね2時間未満で再訪問した場合は、原則として1回のサービスとして取り扱われます。
ただし、利用者の心身の状況などにより短時間で再訪問する必要がある場合は、例外として別々に算定できることがあります。
その場合は、
- なぜ再訪問が必要だったのか
- 利用者の状態
- 医師の指示やケアプランとの関係
などを具体的に記録しておくことが重要です。
9. サービス提供記録の記載例
訪問介護費を適正に算定するためには、サービス内容を具体的に記録しておくことが重要です。
身体介護の記録例
9:00~9:30
排泄介助、更衣介助を実施。立位保持は一部介助にて可能。皮膚状態に異常なし。水分摂取を促し、200mL摂取を確認した。
生活援助の記録例
10:00~10:45
居室・トイレ・洗面所の清掃を実施。利用者本人の昼食を調理し、冷蔵庫内の食品の賞味期限を確認した。室内は清潔に保たれ、生活環境に問題は認められなかった。
2時間ルール適用時の記録例
午前の訪問後に排便がなく、腹部膨満感が増強したため、ケアプランに基づき再訪問した。排泄介助を実施し、症状の改善を確認した。
このように、短時間で再訪問する必要性が分かる内容を記録することで、算定の根拠を明確にできます。
10. まとめ
訪問介護費を適正に算定するためには、単位数や時間区分を理解するだけでなく、算定要件や記録方法まで正しく理解することが重要です。
特に、次のポイントを押さえておきましょう。
- ケアプランと訪問介護計画書に基づいてサービスを提供する
- 身体介護・生活援助・通院等乗降介助の違いを理解する
- 組み合わせ算定や2時間ルールを正しく運用する
- サービス提供記録を具体的に記載する
- 実地指導を意識した記録管理を行う
11. 参考資料
本記事は、以下の資料を参考に作成しています。
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A」
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」
※本記事は、令和6年度介護報酬改定時点の制度に基づいて作成しています。実際に介護報酬を請求する際は、最新の厚生労働省通知やQ&A、各自治体から発出される通知もあわせて確認してください。
















