いつもお世話になってます!Pスケ(@kaigonarehabilid)です。
平成30年度の介護報酬改定では介護老人保健施設の施設区分が厳しくなり、在宅復帰・在宅療養支援を目指す施設を評価する体制となりました。
在宅復帰・在宅療養支援が達成しているかを評価するものとして『在宅復帰・在宅療養支援等指標』というのが使用されるようになっています。
また令和3年度の介護報酬改定ではリハビリの指標が増え、リハビリが手厚く提供できる施設が更に評価されるようになりました。
ってことで、今回は『【令和3年度】リハビリに比重が置かれ、算定区分の判別に必要! 在宅復帰・在宅療養支援等指標の説明』について話したいと思います。
目次
▼目次▼
- 1.背景(平成30年度~令和3年度)
- 2.在宅復帰・在宅療養支援等指標の概要
- 3.在宅復帰・在宅療養支援等指標の各数値
- 4.各項目毎の説明
- A.在宅復帰率
- B.ベッド回転率
- C.入所前後訪問時指導割合
- D.退所前後訪問指導割合
- E.居宅サービス実施数
- F.リハ専門職の配置割合
- G.支援相談員の配置割合
- H.要介護4又は5の割合
- I.喀痰吸引の実施割合
- J.経管栄養の実施割合
- 5.参考
- 6.最後に
1.背景
今までの算定区分として『在宅強化型』と『従来型』の2つだけに分けられていました。
しかし、平成30年度の介護報酬改定より
- 超強化型
- 強化型
- 加算型
- 基本型
- その他
に算定区分が分けられるようになり、基本報酬の違いや『在宅復帰・在宅療養支援加算』の取得に影響を与えるようになりました。
このように平成30年度から介護老人保健施設の算定区分を判別する評価の1つとして『在宅復帰・在宅療養支援等指標』が使用されるようになりました。
また令和3年度の介護報酬改定では
- 訪問リハビリテーションの比重を高くする
- セラピスト3職種配置
- 医師の詳細な指示に基づくリハの提供
というリハビリに重点を置いた施設が更に評価されるようになっています。
2.在宅復帰・在宅療養支援等指標の概要
在宅復帰・在宅療養支援等指標は最高値90としてます。
今回の在宅復帰・在宅療養支援等指標では、平成29年度まで使用した施設区分を判別する項目を含む10項目です。
この10項目すべての数値を足した合計で評価していきます。
評価項目は以下の内容です。
①『在宅復帰率』
②『ベッド回転率』
③『居宅サービスの実施数』
④『入所前後訪問指導割合』
⑤『退所前後訪問指導割合』
⑥『リハ専門職の配置割合』
⑦『支援相談員の配置割合』
⑧『要介護4又は5の割合』
⑨『喀痰吸引の実施割合』
⑩『経管栄養の実施割合』
※ が令和3年度改定部分
また在宅復帰・在宅療養支援等指標で言う、居宅とみなされない施設は
- 病院
- 診療所
- 介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)
となっているので注意が必要です。
3.在宅復帰・在宅療養支援等指標の各数値
在宅復帰・在宅療養支援等指標の数値はそれぞれ以下の表のようになっており、それぞれの計算式で求められた数値を当てはめて指数を算出します。
項目 | 基準 | 数値 |
A.在宅復帰率 | 50%超 | 20 |
30%超50%以下 | 10 | |
30%以下 | 0 | |
B.ベッド回転率 | 10%以上 | 20 |
5%以上10%未満 | 10 | |
5%未満 | 0 | |
C.入所前後訪問時指導割合 | 30%以上 | 10 |
30%未満10%以上 | 5 | |
10%未満 | 0 | |
D.退所前後訪問時指導割合 | 30%以上 | 10 |
30%未満10%以上 | 5 | |
10%未満 | 0 | |
E.居宅サービスの実施数 | 3サービス | 5 |
2サービス(訪問リハビリテーションを含む) | 3 | |
2サービス | 2 | |
0、1サービス | 0 | |
F.リハ専門職の配置割合 | 5以上(PT,OT,STいずれも配置) | 5 |
5以上 | 3 | |
3以上 | 2 | |
3未満 | 0 | |
G.支援相談員の配置割合 | 3以上 | 5 |
3未満2以上 | 3 | |
2未満 | 0 | |
H.要介護4又は5の割合 | 50%以上 | 5 |
50%未満35%以上 | 3 | |
35%未満 | 0 | |
I.喀痰吸引の実施割合 | 10%以上 | 5 |
10%未満5%以上 | 3 | |
5%未満 | 0 | |
J.経管栄養の実施割合 | 10%以上 | 5 |
10%未満5%以上 | 3 | |
5%未満 | 0 |
4.各項目毎の説明
A.在宅復帰率
在宅復帰率は介護老人保健施設から居宅(居宅サービスの施設を含む)に退所され、居宅で介護を受けた人の割合を表します。
在宅復帰率の求め方として、以下の計算式に当てはめて計算します。
① ÷(② - ③)× 100
入所期間が1カ月を超えた者の延数と考えます。
①~③は入所期間が1カ月を超えた者の延数と考えます。
また退所後、直ぐに短期入所療養介護・短期入所生活介護・小規模多機能などの宿泊サービス利用は退所にカウントされません。
あともう一つ。
退所後直ぐに病院などの医療機関に入院し、一週間以内に退院後、再入所した場合は入院期間は入所期間としてみなされます。
B.ベッド回転率
ベッド回転率は直近3カ月でどれぐらいの入退所者がいたかを割合で算出する方法です。
計算式として以下のようになっています。
30.4 ÷ ① ×(② + ③)÷ 2
①直近3月間の延入所者数
ここでいう入所者の定義は
- 毎日24時間入所中の者
- 入所してその日に退所又は死亡した者
を含みます。
3月間の新規入所者とは『3月間のうちに新規入所してきた者』を指します。
また、再入所者も新規入所者として取り扱いますが、入院して1週間以内に再入所した者は新規入所者に含みません。
3月以内に新規退所した者を指します。
医療機関や死亡された方も新規退所者にカウントします。
ただし、医療機関に入院し1週間以内に退院後、介護老人保健施設に再入所した場合は含みません。
また短期入所療養介護の利用者も含みません。
C.入所前後訪問時指導割合
入所前後訪問時指導とは居宅を訪問して利用者本人や家族等に退所後の療養指導を行う事を言います。
入所前後訪問時指導の要件として
- 入所期間が1カ月以上と見込まれる者
- 入所予定日前 30 日以内又は入所後7日以内に居宅訪問
です。
退所先が社会福祉施設等の場合、利用者に同意を得て施設を訪問し退所を目的とした施設サービス計画書策定と診療方針の決定を行います。
訪問は
・看護職員
・支援相談員
・栄養士
・介護支援専門員等
で協力して行い、
- 情報収集
- 入所中に改善目標を到達出来る様、入所者や家族へ指導
を行う必要があります。
これらの指導日及び指導内容の要点は、診療録等に記載します。
入所前後訪問時指導割合の計算式は
① ÷ ② × 100
で、①②はそれぞれ以下のようになってます。
施設を退所後、病院などの医療機関に入院、1週間以内に退院し再度施設に入所した場合は新規入所者に数えません。
D.退所前後訪問指導割合
退所前後訪問指導割合は新規退所者に含まれるのは
- 在宅生活が1月以上継続する見込み
- 入所期間が1月以上
- 退所前30日以内、退所後30日以内に訪問
となってます。
以下の専門職が協力し、入所者の居宅(または退所先の社会福祉施設)へ訪問、利用者や家族に療養上の指導を行う必要があります。
・看護職員
・支援相談員
・栄養士
・介護支援専門員等
又は居宅介護支援事業所から情報提供を受けることでも可能です。
指導内容として、
- 食事、入浴、健康管理等居宅療養に関する内容
- 運動機能及びADLの維持・向上を目的とした体位変換、起座又は離床訓練、起立訓練、食事訓練、排泄訓練の内容
- 家屋改善の内容
- 介助方法の内容について必要な情報を収集、必要な事項について入所者、家族等に指導を行う
となっており、指導日、指導内容の要点を診療録等に記載しておかなければなりません。
計算式として
① ÷ ② × 100
計算式で老健施設退院後、病院などの医療機関へ1週間入院し、退院後同じ施設に再入所した場合、入院期間は入所期間とみなされます。
また退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針を決定するための訪問を同一日に行った場合は①に含むことはできません。
[quads id=2]E.居宅サービス実施数
居宅サービス実施数は提供実績のある『訪問リハビリテーション』『通所リハビリテーション』『短期入所療養介護』を行っているかを数えます。
算定日が属する月の前3月間に提供実績がある居宅サービスです。
老健施設と同一敷地内か隣接する以下の施設で、相互に職員の兼務や施設の共用がされていると、居宅サービスとして数えることが出来ます。
- 病院
- 診療所
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
令和3年度より
- (訪問リハビリテーションを含む)2サービス ⇒ 3
- 2サービスのみ ⇒1
となっているので注意が必要です。
F.リハ専門職の配置割合
リハ専門職の配置割合は介護老人保健施設の入所者に対して主としてリハビリテーションを提供する業務に従事している『理学療法士』『作業療法士』『言語聴覚士』を常勤換算方法で算定した数を入所者の数で除した数に100を乗じた数を計算します。
計算方法として以下の方法で算出します。
① ÷ ② ÷ ③ × ④ × 100
ここで求める時間は常勤換算法で求める勤務すべき時間と同じ方法です。
常勤換算方法の説明は以下のページに詳細を記載してあります。
1週間に勤務すべき時間数が 32 時間を下回る場合は 32 時間を基本とします。
介護老人保健施設に入所してその日のうちに亡くなった人も含みます。
令和3年度の介護報酬改定で配置割合の数値が
- 5以上
- PT、OT、STのいずれの職種も入所者の数で除した数に百を乗じた数がそれぞれ0.2以上
の場合5を取得することが出来ます。
G.支援相談員の配置割合
この項目での支援相談員とは、
『保健医療及び社会福祉に関する相当な学識経験を有し、主として次に掲げるような入所者に対する各種支援及び相談の業務を行う職員』
のことを言います。
主に挙げると以下の業務内容を行っている者です。
① 入所者及び家族の処遇上の相談
② レクリエーション等の計画、指導
③ 市町村との連携
④ ボランティアの指導
この支援相談員の配置割合を求めます。
計算方法として以下のようになっています。
① ÷ ② ÷ ③ × ④ × 100
ここで使う時間数はリハビリ専門職の配置割合と同じで、常勤換算法と同じ求め方です。
1週間に勤務すべき時間数が 32時間を下回る場合は、32 時間を基本とします。
介護老人保健施設に入所してその日のうちに亡くなった人も含みます。
H.要介護4又は5の割合
要介護4または5の割合も必要になります。
計算式として以下の方法で求めます。
① ÷ ② × 100
I.喀痰吸引の実施割合
入所されている人の中で喀痰吸引が実施された割合を求めます。
計算式として
① ÷ ② × 100
喀痰吸引と経管栄養のいずれにも該当する入所者については、①の人数に含めます。
また過去1年間に喀痰吸引が実施されていた者(入所期間が1年以上である入所者にあっては、老健入所期間中(入所時を含む。)に喀痰吸引が実施されていた者)であって、口腔衛生管理加算又は口腔衛生管理体制加算を算定されている入所者も含みます。
J.経管栄養の実施割合
入所されている人の中で喀痰吸引が実施された割合を求めます。
計算式として以下の式で求めます。
① ÷ ② × 100
喀痰吸引と経管栄養のいずれにも該当する入所者については、①の人数に含めます。
また過去1年間に経管栄養が実施されていた者(入所期間が1年以上である入所者にあっては、当該入所期間中(入所時を含む。)に経管栄養が実施されていた者)であって、経口維持加算又は栄養マネジメント加算を算定されている入所者も含みます。
5.参考
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(平成30年度)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成30年度)
- 別紙様式13(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準、指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に 関する基準、指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準、指定介護予防支援に要する費用の額の算定に関する基準、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う介護給付費算定に係る体制等に関する届出における留意点について)
- 令和3年度介護報酬改定における改定事項について
6.最後に
在宅復帰・在宅療養支援等指標は介護老人保健施設の算定区分を判断するためには必要な指標です。
令和3年度の介護報酬改定でリハビリの在宅支援が行われる事で数値が上がるようになっています。
ある程度の内容を理解し、介護老人保健施設で働く一人一人のスタッフが把握することが重要だと思います。